Mekong Delta 2019 Report.

第19回メコンデルタ参加型改善活動国際研修

ホーチミン、タンソンニャット空港に集合した参加者。
ホーチミン、タンソンニャット空港に集合した参加者。

5か国から50名が集まって、医療労働の参加型活動を学ぶ

第19回参加型改善活動を学ぶ国際トレーニング「メコンデルタ2019」が、ベトナム社会主義共和国カント市で8月17日から23日まで行われ、インドネシア、韓国、日本、フィリピンから28名が、現地ベトナムから看護師、教員、学生等21人が参加しました。今回のテーマは、医療現場の安全衛生改善活動で、ヘルスワイズとして4年間続いてきました。本年はILO(国際労働機関)セネガル事務所でアフリカの安全衛生を担当されていた、本プログラムの開発者の一人であるトンタットカイさんが、ILOを退職されカント市に戻られたため、カイさんを中心とするメンバーでトレーニング全体の再構成を行い、テキストも改編して実施しました。受け入れのホストは、従来からこのトレーニングを受け入れてきたカント医科大学と、今回新しいホストになることを承認していただいたホアンミ―クーロン病院(カント市で初めての民間病院で、ベトナム全土にネットワークを持つ)でした。

ホーチミン国際空港からバスで移動する

海外での研修にはトラブルがつきものです。今年は事務局である仲尾が手始めに大失敗をやらかしました。渡航前日の8月13日夕方、自分のパスポートが6か月以内で切れることを忘れていたのです。ベトナム入国には、6か月以内で切れるパスポートはビザ申請が必要です。あわてて旅行会社と連絡を取り、出発日を一日伸ばし、即日ビザ取得をしてから渡航するという綱渡りになりました。

カント~ホーチミン間はバスで4時間半です。空港への出迎えは一日仕事です。午後3時、集合時刻定時に28名の参加者が集合し、カントに向かいました。日本からは産業医科大学の6名の医師、東京工科大学の10名の看護学生と五十嵐教授、学習院大学から2名の文学部学生、それに熊本学園大学中地重晴さん、日本赤十字看護大学吉川悦子さん、ILOインドでお仕事をされている、カイさんと共にこの研修の開発者である川上剛さんが参加しました。韓国から大邱労働者健康センターのイミョンリさん、フィリピンは昨年参加したアンジェラさんとラモスさん、インドネシアからは昨年参加のエンダさんと新しい参加のウィルサーさんでした。

メコンデルタ研修のオブザーバー、川上剛さんらが基調発言

開会式で発言するオブザーバー川上剛さん

18日の開会式は、宿泊施設のホリデイワンホテルで行われ、病院関係者、本プログラムとゆかりの農村、労働組合の代表が参加されました。川上剛さんと吉川悦子さんが基調発言を行い、川上さんは参加型改善活動がアジア全体に広がっていること。吉川さんは、医療従事者のメンタルストレス改善に役立った事例を報告しました。

引き続き参加型改善プログラムの実習に入り、仲尾が全体のスケジュールを説明し、参加者は4グループに分かれてリーダーとサブリーダーを決めました。次にカイさんが参加型改善活動の6つの原則を説明し、吉川さんが参加型改善活動の重要な教材であるアクションチェックリストとその使用方法を説明しました。次にエンダが職場にある好事例の重要性とそれをどう集めてトレーニングするかを説明しました。五十嵐さんと中地さんは、ベトナムの病院で収集した20の良好事例を示し、よいと感じた事例を、安上がり、シンプル、効果がある、等に分けて参加者が投票しました。すでにある好事例から学ぶという視点が、参加型改善では、大切だからです。最後にトアイさんが、各グループの分担について説明しました。夜は歓迎会が開かれ、各国の衣装をまとった参加者たちはおおいに親交を深めました。

二病院を訪問して「改善活動のよい事例」を集める

病院を訪問しワークショップの好事例を集める。(ホアンミークーロン病院にて)

19日、昨日学んだことを活用して、21日に行われるカント市医療関係者に対するワークショップの教材写真を集めるため、産婦人科病院とホアンミ―クーロン病院に向かいました。各グループ2台のデジタルカメラを持ち、病院を回って良好事例を集めました。午後はホアンミ―クーロン病院で集めた写真を選択し、教材作成をしました。

ワークショップは一日で、開会式に続き、チェックリストを用いた病院巡回、その印象に基づいた病院改善の4領域の学習(ものの保管と患者の移動、作業台と医療器材、作業場環境と有害物、福利厚生とストレス予防)を行います。そして最後に病院からの参加者に改善活動計画を作ってもらい発表します。4領域の学習に際しては、その学習目標に会うパフォーマンスをはじめに参加者全員で行います。例えば、ものの保管と移動に関しては、12個の生卵を皿にいれて参加者全員で運んでもらい、その印象を聞いてどのように改善したら、早く安全に運べるかアイデアを出してもらう、等です。

有機農業を行う農場を訪問

20日午前、本来ならば学生だけが訪問し、医師など専門家の参加者は教材作成に集中する予定でしたが、皆さんからの強い希望があり、全員で農村見学に行くことになりました。朝7時にカント市を出発し、約30km離れたソンハウ農場へ行きました。ソンハウ農場ではベトナム共産党同地域副書記からソンハウ農場での参加型改善活動(ウインドと命名されています)を学び、ボートに乗って、有機農法で行っている果物農場とウインドの改善を18年間行っているハイさん宅を訪ねました。果物農場では、農場一面が防虫のため薄い網で覆われる下を歩いて、プラムをもいでは味に舌鼓をうちました。ハイさんのお宅では、農薬の管理や家庭環境の改善を見せていただきました。

熱心に見学したため帰り時間が遅れ、明日のプレゼン作りは午後2時半から4時半まで集中して行い、その後午後9時までリハーサルを続けました。皆くたくたになった一日でした。

全参加者が一丸となりワークショップが成功

カント市病院関係者と共にHealthWISEトレーニングを行う各国の参加者

21日はいよいよ医療労働者のためのヘルスワイズワークショップの日です。朝6時、仲尾にカイさんからメールが入り、「参加者は一生懸命準備をしたが準備不足の感がぬぐえない。また本日のトレーニングは8病院から、主任の医師、看護師が30名余り参加する予定である。ベトナム側としてはパフォーマンスのみ参加者で行い、アクションチェックリストの巡回と技術領域、改善計画作成説明は、ベトナム側運営委員会と五十嵐、吉川、仲尾でやることを承認していただきたい」とのことでした。

朝8時から開始された開会式には、報道陣20社がかけつけ、ホアンミ―クーロン病院の会議場は満杯でした。急な変更にも関わらず、各グループは団結してパフォーマンスを行い、ベトナムと日本の運営委員会は緊急ではありましたが、技術セッション説明を担当しました。時間は朝から夕方6時近くまでかかりました。この日も疲労困憊でしたが、事前に参加者全員がリハーサルを行ったこともあり、経験あるトレーナーと自分たちのリハーサルでの経験とを比べることが出来、よい経験になったと思います。

中学校や中小企業でもたくさんの改善が

22日午前は、フンフー中学校とチュンアン農業機械工場を訪問しました。カント市中高で行われている総合環境教育活動ウィンディと工場の改善活動ワイズの実際を見学するためです。2011年から始まったウィンディは、ウィンディ用アクションチェックリストを用いて、生徒と教員の生活学習環境改善を進めるもので、すでにカント市71校で実施されていて、数千の改善成果が収集されています。参加型改善活動の応用です。病院や農村、中小企業と同じ方法でプラン(P)ー実施(D)―チェック(C)ー活動(A)と順を追って活動を進めていきました。東京労働安全衛生センターがサポートして進めてきましたが、最近カント市教育トレーニング部の公的活動となりました。

フンフー中学校生徒や教員がWINDY環境改善活動で作成した成果物

教員リーダーの先生が2018年から始まった経過を報告し、中学生や教員が行った実際の成果物を飾っている展示室を見せていただきました。プラスチックの袋を使わず紙袋を使う活動、不用品で作った勉強道具やデコレーションや教材などを皆興味深く見学しました。各クラスにもウィンディの展示場所があり、学校の会談下には、古タイヤを利用した遊び場が作られていました。突然の多くの外国人訪問に生徒たちは大騒ぎとなり、看護学生たちはサインをねだる生徒たちで身動きが出来なくなる状態でした。

23日午前は参加者の活動を報告する国際ワークショップが開かれました。大邱労働者健康センター、産業医科大学、フィリピン、インドネシアの活動報告、ベトナムからウィディと7月にホアンミークーロン病院で行われた改善活動の報告がありました。また東京工科大学と学習院大学は、ベトナムでの一週間の感想を発表しました。そしてこのメコンデルタ参加型改善ネットワークを継続発展させるために直ちに行う行動、来年の企画をどう進めるか、グループ討議を行い発表しました。

直ちに行う行動は、参加者のメールアドレスを共有して経験をわかちあう。もっと英語を勉強する。他国の若い世代に紹介する、アクションチェックリストを自分の職場で使う、などが出されました。来年の企画については、来年は中小企業で行いたい、スケジュールを簡素化する、もっと他の国の人々を招く、などがあげられました。

修了式は夜に行われ、男女の各国参加者はベトナムの伝統衣装アオザイを着、ベトナムの女性たちはゆかたを着て、修了証書授与式に臨みました。来年はこのプログラムも20回目を向かいます。トンタットカイさんとグエンフオントアイさんを軸とする現ネットワークが強化された今年を踏まえ、多くの人たちがベトナムで学びあうことを期待しています。