PAOTワークショップにおいて、ファシリテーター役をつとめるトレーナーは、重要な役割を担います。ファシリテーターは、注意深く参加型の勧め方を活用する必要があります。とりわけ、トレーナーとしてPAOTワークショップを準備する場合には、「技術領域ごとの情報伝達のテクニック」に気を使うよりも「参加者がいかに改善活動を実行するか」に、より関心を払うべきです。ファシリテーターとしては以下の心構えが必要です。

-「一般的理論」よりも実際的なアイデアを強調します

-「講義」よりも討議と経験の交流を引き出すよう心がけます

-「参加者の弱点や問題点」よりも「強みや成果」に注目します

-「教師」としてではなく参加者にとっての「助言者」や「進行役」になります

1)プレゼンテーションは明確で簡潔に

 良い技術セッションのための基本は、ファシリテーターのプレゼンテーションは最大で30分を超えないようにすることです。経験を重ねたトレーナーは、明確で、前向きで、実際的な方法で、シンプルな改善実行に焦点を絞った、たいへん簡潔で「次に何をするか」にしぼったプレゼンテーションを行うようにします。質問やコメントや議論を歓迎するようにします。一方通行でなく双方向で行われるセッションは、「参加」を盛り上げるのに実に有効です。この双方向のセッションを作るために、プロジェクターの失敗や電池切れ等の不足の事態にならないように、周到に効果的な準備をすることが重要です。常にプロジェクターの代替部品を用意し、それらを取り換える方法を知っておきます。もしくは、電源切れでも続けられるように、印刷した写真集を使います。

2)6つの技術領域の順序

労働条件や労働の質改善に重要である主要な技術問題について参加者の理解を助けるため、トレーニングにおいては、特に6つの技術領域が強調されます。これらの技術領域は、初めにチェックリスト実習で討議されます。「物の運搬と保管」、「ワークステーション」、「機械安全」、「作業場環境」、「福利厚生施設と作業編成」、「環境保護」の順に技術セッションを行うことは当を得た方法です。特に、「物の運搬と保管」を、最初の技術セッションで取り上げることは、参加者に良い点と改善点を簡単に関連づけて理解させるのに役立ちます。これは参加者が他の技術領域をよりよく理解できることにつながります。

3)現場の良好実践事例を強調する

 対象とする職場がある地元の良好実践事例は参加者をひきつけ、同様の実際的な改善を起こす刺激を参加者に与えます。ファシリテーターは地域や職場の良好実践事例を収集し、トレーニングの中で参加者に紹介します。地元の現場で行われた良好実践事例は、常に地元の条件でだれもができることを示しています。それゆえ、ファシリテーターは、これらの良好実践事例のスライドをみせながら、プレゼンテーションをすることが必要です。異なった組織や職場のファシリテーター間で、そのような良好実践事例を交流することも、推奨されます。

4)参加者の興味を引き出し、参加への共感を高

 ファシリテーターは、参加者のアクションを引き出すために、参加者自身の経験に焦点を当てるようにします。参加者から意見や考えを求めましょう。活き活きとした相互の討議は、参加への共感を高めることになるからです。一般的でない技術用語は、避けましょう。プレゼンテーションには親しみやすい言葉を用いましょう。参加者は全てのPAOTセッションの中心なのです。

5)楽しいトレーニングにする

 歌やゲームや寸劇は、参加者の心理的な壁を破るのに役立ちます。ゲームは個別的なセッションの技術的内容に関連させます。例えば、「卵運びゲーム」は、「物の運搬と保管」のセッションの導入で良く使われます。このゲームでは、参加者はいくつかの生卵を小さなボールに入れて次々に手渡し、物の運搬の安全な方法を学びます。ファシリテーターが技術的内容を反映させた新しいゲームやパフォーマンスを行うことは、楽しく理解できるトレーニングをするために大切なことです。私たちは常に参加者を活発にしようと心がける必要があるのです。ゲーム、ブレーンストーミング、Q&A、イベントの投票やジョークさえも参加者を活気づけるのに大きく役立ちます。独自のアイデアや技術を応用します。

6)トレーニングの進行の良きまとめ役となる

 PAOTワークショップを準備するときには、ワークショップの成功ため、予算、準備や進行を整えること、参加者集め、トレーニングプログラムを企画することを含む多くの方面に注意深く気を配らなければなりません。ファシリテーター同士で良いチームを作り、役割を分担することは、成功するワークショップを作り上げるために重要です。

7)ワークショップの運営に参加者を入れる

 PAOTトレーニングでは、参加者にワークショップ会場や備品の準備に参加してもらったり、出欠のチェックや、休憩や昼食を確認したりしてもらいPAOTトレーニングを運営するのを手助けすることができます。これらの経験は、自身の職場や地域でのPAOTワークショップを企画する上で参加者を手助けすることになります。